強誘電体や強弾性体に外部電場を印加したり温度を変化させたときの表面の応答を原子間力顕微鏡(AFM)により調べた。具体的には以下の通りである。 (1) チタン酸バリウム(BaTiO_3)表面の電場印加によるAFM測定 室温(正方晶系)で、c軸方向にAFM探針に2KV/cmの電場を印加して、表面高さの微分像を解析することにより、90゚分域境界の部分的な移動を明確に観察することに成功した。この結果と1950年代初頭に行われたLittleらによる分域反転の結果を比較したところ定性的に良い一致をみた。 (2) モリブデン酸ガドリニウム(Gd_2(MO_4)_3)表面のAFM測定 室温の斜方晶分域の存在をAFMでとらえることには成功した。表面の曲がりの程度から格子定数の比を計算したところ、1970年代に行われた染谷と小林による電子線(Electron-mirror microscopy)の結果と驚くべき精度で一致した。 (3) 3酸化タングステン(WO_3)表面の温度変化によるAFM測定 本物質では室温で単斜晶系と斜方晶系の状態に関係した2種類の分域が共存している。液体セルを使った特殊な測定で試料の温度を下げ、三斜晶系への相転移点(17℃)通過させて、三斜晶系における分域も観察した。共存する以上の3稲類の分域の間には相互作用が存在するが、単斜と三斜分域の間の相互作用の観察に成功した。 (4) その他の測定 この他、チタン酸鉛(PbTiO_3)、燐酸ネオジウム(NdP_5O_<14>)、急冷法でガラス化した酸化物強誘電体の再加熱による表面形状の変化をPbTiO_3、LiNbO_3などで測定することにも成功している。
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