1 強誘電分域構造のSEMによる直接観察の際に起こるコントラスト消失の原因 SEMによる分域構造観察でのコントラストの消失原因が帯電による分極反転と考え、抗電場が大きくなるTcよりずっと低温でSEM観察を行い、どの程度帯電による分極反転を防げるか調べた。この結果、2kV程度の低加速電圧では、消失原因が帯電による分極反転ではなく、コントラスト発生起源である正負両分域での二次電子放出効率の違いであることが分かった。これは本質的な問題でありSEMの使用法を変えない限り解決できないことが分かった。 2 冷却器を使ったSEMによるSC(NH_2)_2の分域構造の直接観察 SEMによる分域構造の直接観察はコントラストの消失を招くが、消えるまでの僅かな時間で分域構造の観察を試みた。研究費の2/3を費やして購入したSEM用冷却装置を使ってTc:169KのSC(NH_2)_2の分域構造を観察した。その分域壁はNaNo_2と同様に整然とした擬一次元構造をしていることが観察でき、また分域の最小幅は0.2μmまで確認できた。 3 SEMによる分域構造の間接観察のための準備 NaNO_2で既に実施している方法であるが、エッチングした表面をSEMで観るという間接的な方法で分域構造の粗視化過程を調べる。試料はNaNO_2と同様にincommensurate相を持つK_2Zncl_4にした。NaNO2_2でのantistrippleが二枚の分域壁の癒着で起こるのに対し、K_2ZnCl_4では六枚の分域壁からなる。この試料の腐食液としてアセトンが優れていることを既に見つけている。現在このエッチングの分解能はまだミクロンオーダーで光学顕微鏡で観察している。腐食液のあと少しの改良でこの分解能はサブミクロンオーダーまで向上する。いよいよ光学顕微鏡からSEM観察に移行し、粗視化の初期過程が観察できる段階になりつつある。
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