研究課題/領域番号 |
09640408
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
生嶋 明 豊田工業大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10029415)
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研究分担者 |
斉藤 和也 豊田工業大学, 大学院・工学研究科, 助手 (20278394)
藤原 巧 豊田工業大学, 大学院・工学研究科, 講師 (10278393)
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キーワード | ガラス転移 / シリカガラス / 光散乱 / 構造緩和 |
研究概要 |
ガラス転移は本質的に動的なものであり、過冷却液体中の密度揺らぎの非振動成分が凍結することにより起こる。したがって、この凍結過程を含むスローダイナミクスはガラス転移の主要な研究対象であり、古くから多くの研究がなされてきた。最近のモード結合理論の発展に伴い、再びガラス転移のスローダイナミクスへの注目が集まり、中性子スピンエコー法や光散乱を用いたこの理論のテストが盛んに行われている。しかしながら、これらの研究ではガラス転移点以上の緩和現象が中心であり、ガラス転移点以下の凍結した密度揺らぎの挙動に関して詳しい研究はない。本当にガラス転移点以下で密度揺らぎの非振動成分が完全に凍結するのであろうか。構造緩和は起こらないのであろうか。 本研究ではこの疑問に答えるべく、シリカガラスにおける構造緩和過程を光散乱法、およびフーリエ赤外吸収測定法により詳細に調べ、Cl、Na、AlおよびOH基などの不純物により構造緩和過程が劇的に変化することを見出した。α緩和とよばれる粘性流動に支配された緩和が不純物の添加により促進されると同時に、不純物の添加により副緩和が発生し添加量の増加に伴ってこの副緩和も促進される。この結果、不純物を含むシリカガラスでは、ガラス転移点以下の温度で粘性流動における緩和が停止しても、副緩和による構造緩和が進むことを明らかにした。 以上の結果は、不純物の種類および添加量を変えることにより構造緩和過程を系統的に制御できることを示しており、ガラス転移の機構解明に重要な知見を与えると同時に、超低損失ファイバ用ガラスの開発など応用面でも重要な研究になると考えている。今後、不純物の構造緩和に及ぼす微視的な役割について明らかにする計画である。
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