研究概要 |
本年度は,PrCu_2の協同ヤーン・テラー転移比熱への磁場の効果について明らかにするために,^3Heクライオスタットを用いて,各結晶軸方向に6Tまでの磁場を加え,0.5Kから30Kの温度範囲で,断熱法により比熱を測定した。測定された比熱の形を理想的協同ヤーン・テラー比熱にガウス型の転移温度分布を取り入れた計算結果と比較検討した。ゼロ磁場における中心構造相転移温度、Tc、は7.6Kであり転移温度の分布幅、σ、は0.15Kと求まった。σの磁場変化は,c-軸の変化が一番大きく,a-軸では小さい。b-軸では,磁場を加えてもσは変化しない事がわかった。 ・c-軸では,磁場の増加とともに,比熱ピークは少々減少するが比熱ピーク位置はほとんど変化しない。 ・a-軸では,比熱異常は,磁場の増加とともに高温側に移動した。比熱のピーク値はやや減少するが,異常の形はゼロ磁場の形と変わらない。a-軸、c-軸では,ヤーン・テラー構造相移転に対する磁場の効果は小さい。 ・b-軸では,磁場の増加とともに,比熱ピーク位置は低温側に移動すると同時に比熱の極大値も減少する強い磁場効果が観測された。この強い磁場変化は協同ヤーン・テラー転移において2準位の初期分裂(秩序変数に対応する)が磁場によって増加するためであると理解される。 ・各結晶軸方向のTcの磁場変化から,相図を作成した。b-軸方向では,磁場はヤーン・テラー移転を著しく抑制する事を発見した。逆にa-軸とc-軸では転移温度の高温側への移動が観測された。
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