研究概要 |
本研究は、強相間電子系のうちLa_<1-X>Sr_XMnO_3の試料作製および、熱伝導率κ、熱拡散率α、音速υ_sの測定を行い、モット転移近傍における熱的散乱メカニズムを電気的、磁気的な測定結果を比較しながら解明を行った結果、以下の点が明らかになった。 (1)単一相で高密度なLa_<1-X>Sr_XMnO_3焼結体を種々のSr濃度X(0.11<X0.17)に対して作製し、音速υ_Sを10〜300Kの温度範囲で測定した。その結果、強磁性転移温度(T_C)付近で音速が極小を示すことが明らかになった。さらにT_C以下で電気抵抗率が再び増大する温度(T_P)付近でも音速が極小を示すことがわかった。このT_P付近での音速の極小は、X=1/8を中心とする電荷整列と深く関係すると考えられる。 (2)同一試料の熱伝導率κ、熱拡散率α、熱起電力Sを10〜300Kの温度範囲で測定した。その結果、強磁性転移温度(T_C)付近で熱伝導率κ、熱拡散率αが極小を示すことが明らかになった。極小の大きさは音速の異常だけでは説明できず、T_C近傍でのスピン・フォノン散乱が増大するためと考えられる。特に構造相転移温度(T_S)がT_Cと一致するX=0.7近傍で大きく、X=0.17から離れるにしたがって小さくなって行くことから、スピン・フォノン散乱の増大は、斜方晶と菱面対晶の間の構造不安定性が大きくかかわっていると考えられる。 (3)La_<1-X>Sr_XMnO_3焼結体のX=0.4〜0.9の試料を作製し、磁化、電気抵抗率、音速、熱膨張率の測定を行った。X=0.5近傍の試料でT=150K付近で反強磁性転移が観測され、それにともなう音速、熱膨張のヒステリシス的な異常も確認された。この反強磁性転移はNd_<1-X>Sr_XMnO_3などで確認されているX=1/2の電荷整列相転移と類似のものと推定しているが、中性子散乱などの直接的な検証が今後の課題となっている。X=2/3,3/4近傍でも物性値の異常が観測されており、電荷整列現象とフォノン散乱の関係を系統的に検討している
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