研究概要 |
巨大磁気抵抗(CMR)効果を示すことにより注目されているペロブスカイト型Mn系酸化物(R_<1-x>A_x)MnO_3は、強磁性転移温度T_cで金属・絶縁体転移や、局在スピン間の超交換相互作用やヤーン・テラー相互作用、電荷および軌道整列現象、構造相転移など、スピン系、軌道を含む電子系、さらには格子系が複雑に相関した興味ある物性を示す。現在までの研究成果は電気的、磁気的、中性子散乱を含む結晶学的、光学的性質などに関するものが中心であり、フォノン伝達に関する物理量(熱伝導率κ、熱拡散率α、比熱C、音速υ_sなど)の精密な測定及び解析は殆どなされていなかった。本研究では、La_<1-x>Sr_xMnO_3(LSMO)の高品質試料作製および熱伝導率κ、熱拡散率α、熱起電力S、音速υ_sの測定を行い、電荷整列相転移近傍におけるフォノン伝達メカニズム、特に電子・格子相互作用やスピン・格子相互作用、さらに磁気的ポラロンの輸送現象への影響を電磁気的な測定結果と比較しながら検討した。 研究の主な成果は以下の点である。 1) LSMO系では一電子バンド幅が大きく従来は電荷整列相転移は起こらないと考えられていたが、最近、中性子回折実験からX=1/8を中心としたpolaron orderingの存在が示唆された。本研究でも音速測定からX=1/8を中心とした異常を観測し、音速測定がMn系酸化物の電荷・磁気秩序を知る有用な手段であることが明らかになった。 2) LSMO系の熱伝導率の測定結果から、強磁性転移温度T_c近傍で熱伝導率の極小が観測され、T_c近傍の広い範囲で非常に大きなスピン・フォノン散乱が存在していることを見い出した。 3) LSMO系のX=1/2近傍(0.48【less than or equal】X【less than or equal】0.52)に対して磁化M、電気抵抗率ρの温度依存性を測定した結果、T_c以下で強磁性(FM)相から反強磁性(AFM)相への転移が存在することを初 4) LSMO系(0.48【less than or equal】X【less than or equal】0.82)に対して磁化M、電気抵抗率ρ、音速のυ_s、熱膨張dL/Lの温度依存性を測定し、得られた結果からLSMO系について強磁性転移や電荷整列相転移を示す相図を提案した。X=1/8,1/2,2/3(or3/4)を中心とした3つの電荷整列相から成っていることが明 以上のように、本研究においてLa_<1-x>Sr_xMnO_3系の広い範囲のSr組成Xに対して、磁化M、電気抵抗率ρ、熱伝導率κ、熱拡散率α、音速υ_S、熱膨張dL/Lの温度依存性を測定し、得られた結果からLa_<1-x>Sr_xMnO_3系について強磁性転移や電荷整列相転移を示す相図を提案した。
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