熱膨張・磁歪によるフェビ-フェルミオンの基底状態の研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09640415
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 澤田 安樹 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90115577)
• 研究分担者: 酒井 治 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60005957)
• キーワード: 熱膨張 / 磁歪 / UPt_3 / ヘビーフェルミオン / 超伝導 / スピン3重項 / 電子対 / オーダーパラメータ

研究概要

UPt_3は多相の超伝導状態を示す重い電子系ウラン化合物である。最近、^<195>PtのNMRのナイトシフトの実験や理論研究から、更に新しい別の超伝導相が存在することが示唆されている。UPt_3の超伝導状態は、スピン三重項の電子対状態にあり、磁場の減少によりゼロ磁場で安定な異なる超伝導相への転移した可能性があると考えられている。しかし、NMR以外の実験ではこの様な現象は全く観測されていない。従って、他の実験から新しい超伝導相の確認が必要である。また特異な超伝導相の起源を決めるためにも、この様な相の確認は重要である。熱膨張・磁歪は高感度の転移点を決める有効な方法のひとつなので、NMRのナイトシフトに対応する変化を、c||H、b||H状態の磁歪測定を行い検出を試みた。14mKからの各温度におけるc||H方向のc軸磁歪の磁場微分の磁場変化を示した。0.5T付近に折れ曲がりが認められた。0.5T付近の変化は、超伝導転移点に比較すると小さい。しかい、新しい転移点は、単にオーダーパラメータの方向を変えるだけの変化なので磁歪が小さい可能性は高い。0.23T以下でナイトシフトの変化が起こることが報告されているので、磁場が約2倍異なるが、同じ現象を捉えているのか今後追求する必要がある。b||H軸方向のb軸磁歪の変化を測定した。1T付近にヒステリシスを伴った大きな試料長の変化がある。また、2.8T付近に常伝導状態への転移と考えられる変化がある。さらに、3.7Tの磁場中での熱膨張測定をした。70mK以下で顕著なヒステリシスが見られる。この変化はナイトシフトの変化と対応している可能性がある。

研究成果

• [文献書誌] 鈴木 三千郎: "Two-axis gonimeter for use in the mixing chamber of dilution refrigerator" Cryogenics. 37,No5. 275-277 (1997)
• [文献書誌] 石黒 晶子: "de Haas-van Alphen effect and Fermi surface of USb" Journal of the Physical Society of Japan. 66,No9. 2764-2769 (1997)
• [文献書誌] 澤田 安樹: "Anomalous stability of ν=1 bilayer quantum Hall state" Solid State Communications. 103,No8. 447-451 (1997)
• [文献書誌] 澤田 安樹: "Interlayer quantum coherence and anomalous stability of ν=1 vilayer quantum Hall state" Physica B. (1998)
• [文献書誌] 石黒 晶子: "de Haas-van Alphen effect in CoS_2" J.Magn.Magn.Mater.(1998)
• [文献書誌] 澤田 安樹: "2層系量子ホール効果 どのような現象が期待されるか?" 固体物理. 32,No12. 941-951 (1997)
• [文献書誌] 本河 光博: "実験物理学講座 第12巻 実験環境技術" 丸善株式会社, (1997)