UPt3は多相の超伝導状態を示す重い電子系ウラン化合物である。195PtのNMRのナイトシフトの実験や理論研究から、更に新しい別の超伝導相が存在することが示唆されている。UPt3の超伝導状態は、スピン三重項の電子対状態にあり、磁場の減少により、ゼロ磁場で安定な異なる超伝導相への転移した可能性があると考えられている。しかし、NMR以外の実験ではこの様な現象は全く観測されていない。従って、他の実験から新しい超伝導相の確認が必要である。また特異な超伝導相の起源を決めるためにも、この様な相の確認は重要である。熱膨張・磁歪は高感度の転移点を決める有効な方法のひとつなので、NMRのナイトシフトに対応する変化を、c||H、b||H 状態の磁歪測定を行ない検出を試みた。14mKからの各温度におけるc||H 方向のc軸磁歪の磁場微分の磁場変化を示し、0.5T付近に折れ曲がりが認められた。0.5T付近の変化は、超伝導転移点に比較すると小さい。しかし、新しい転移点は、単にオーダーパラメータの方向を変えるだけの変化なので磁歪が小さい可能性は高い。0.23T以下でナイトシフトの変化が起こることが報告されているので、磁場が約2倍異なるが、同じ現象を捉えているのか今後追求する必要がある。b||H軸方向のc軸磁歪の変化を測定した。C相内に2本、B相内に1本の相線と思われる線が得られた。C相内の1本は、従来知られていたピーク効果によるものと思われる。残りの2本は、超伝導相の転移と関連していると考えられる。
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