研究概要 |
本研究の目的はLa_<2-x>Sr_xCuO_4のx-0.125付近の組成における低温磁気構造を解明し、われわれが提唱しているスピンフロップを引き金にした磁場誘起相転移を検証し、さらにこの物質の磁気構造と電子状態の磁場による変化を明らかにすることである。 本年度は、NMR、超音波、中性子回折等の実験を行い、以下の成果を得た。1)反強磁性的磁気秩序への転移温度T_N=40Kで、温度の低下によるC_<44>弾性係数の増大が完全に停止することを観測し、磁気秩序が結晶全体にわたりバルク状態で出現する確証を得た。2)磁気モーメントμ_eはT_N以下で温度の低下とともに徐々に増大し、4.2Kでμ_e-0.08μ_Bとなる。さらにこの反強磁性的磁気秩序に関して、逆格子点(1/2±ε,1/2,0),ε-0.126に中性子弾性散乱ピークを観測し、斜方晶La_<1.88>Sr_<0.12>CuO_4においても正方晶La_<1.48>Nd_<0.4>Sr_<0.12>CuO_4と類似な8倍周期の反強磁性的磁気秩序であることを検証した。3)スピンフロップは6T-8Tの磁場において起こるり、H=8T,T<15KでC_<44>モードの音速の急激な増加が観測され、磁場誘起相転移の存在を強く示唆する結果を得た。4)超伝導混合状態における磁束格子の弾性定数を測定し、超伝導が結晶全体にわたりバルク状態で出現する確証を得た。したがって、Ls_<2-X>Sr_xCuO_4のx-0.125付近の超伝導と磁気秩序は結晶全体にわたりバルク状態で共存する確証を得たと考えられる。5)5T以下の磁場中で粉末X線回折実験を行ったが構造の変化は観測されず、8T以上の磁場による回折実験が必要なことがわかった。来年度は、本年度購入した単結晶を用いた低温強磁場中のX線回折実験を行うためのクライオスタットを行い構造変化の直接検証を試みる予定である。
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