研究概要 |
スピン液体状態と反強磁性秩序相の間の磁気的量子相転移点の近傍で、電荷のダイナミックスがどのような影響を受けるかという問題について、t-J模型の光学伝導度およびそのドル-デ・ウェイトを数値的に計算して調べた。 まず、(Sr,Ca)_<14>Cu_<24>O_<41>に代表例される梯子系を用いてスピンギャップ系にホールをドープした時の電荷のダイナミックスを調べた。有限温度における光学伝導度の周波数依存性を厳密対角化の方法で計算した。スピンギャップよりも高い温度においては1/ωの周波数依存性をもち、2次元系と似たインコヒーレントな振る舞いを示すことがわかった。スピンギャップ以下の温度になると、光学伝導度に擬ギャップが開いて、擬ギャップ内のウェイトが低周波部分に移行することが分かった。この温度領域で電荷のダイナミックスを記述するボゾンモデルを調べて、動的臨界指数がz=2となっていることを計算し、ダイナミックスがコヒーレントになっていることを示した。 さらに反強磁性秩序相にホールをドープしたときの電荷のダイナミックスを2次元t-J模型で調べた。ドル-デ・ウェイトを絶対零度で厳密対角化によって数値計算してド-ピングの2乗に比例していることを示した。この結果を金属・絶縁体転移のスケーリング則と比較すると動的臨界指数がz=4と求められ、輸送現象における異常なインコヒーレンスがこの臨界指数に対応していることを示した。さらに、3サイト項を含む新しい電子間相互作用を付け加えてドル-デ・ウェイトを同様に計算し、動的臨界指数がz=2と変化してコヒーレンスが回復することを見出した。
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