本研究では、「量子力学に摩擦を入れたときにどうなるか?」という命題に対する実験的な回答を与えることができた。微小ジョセフソン接合でおこる位相空間での巨視的量子トンネル効果では、トンネルに付随するエネルギー散逸が重要である。エネルギー散逸は主として電荷の移動が連続的なオーミック短絡抵抗と、離散的なトンネル抵抗の二つの場合が考えられる。この両方の場合についてこのエネルギー散逸を、微小ジョセフソン接合のごく近傍に付加した回路により制御することに成功した。トンネルに付随するエネルギー散逸をコントロールすることで量子力学の支配する領域から、古典力学の支配する領域への遷移を確認した。これらの問題は、微小トンネル接合に限らず、磁化のトンネル、ヘリウムなどの量子液体の核形成や、宇宙の創世などにも関連する一般性を有している。
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