研究概要 |
金属間化合物PrIn3は増強核磁性体であり0.13mKで核反強磁性転移する。しかもインジウム核の電気四重極相互作用が非常に大きな系である。PrIn3の核磁性が輸送現象にどのような影響をおよぼすかを研究するため、電気抵抗測定を0.08mKから4Kまでの広い温度領域で行った。PrIn3電気抵抗は4Kから温度が減少するに従い減少し約3mKで極小になる。3mKから温度がさらに減少すると、こんどは抵抗が増大する。このようなmKの超低温領域での温度変化は今回我々の研究で初めて観測された。 3mK以下での温度の減少による電気抵抗の増加はインジウム核の電気四重極相互作用によるものであると考えている。インジウム核の電気四重極相互作用によりQモーメントは10mK以下から徐徐に結晶電場の主軸に対して向きをそろえ初め1mK以下の温度になるとほぼQモーメントは揃う。この温度変化は電気四重極相互作用による核スピンレベルの分裂がボルツマン分布で基底レベルに落ち込む過程である。ここでインジウムのサイトは三つあり、それぞれ結晶電場の主軸は直交している。伝導電子から見ると10mK以上では三つのサイトのQモーメントの向きは全く乱雑に向いるため三つのサイトのQモーメントは同等に見える。1mK以下になるとQモーメントの向きは三種類のサイトに分かれ伝導電子の散乱を考えるともとの格子の対称性からさらに低対称の格子になる。この格子の低対称化は10mKから始まり0.1mKでほぼ完了する。したがって電気抵抗が10mKから徐徐に増加する。一方3mK以上で抵抗が温度とともに増加するメカニズムはまだ分かっていないがこの二つの効果で抵抗が3mKで極小になると考えられる。今後の課題は具体的な理論計算による数値的な解析を行うこと,および核反強磁性転移点0.13mKで抵抗の変化を観測することが考えられる。
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