研究概要 |
一般にランダム磁性体は観測の時空尺度によって多様な側面をみせる。本研究課題では5つの測定手段(1)弱磁場磁化測定、(2)強磁場磁化過程、(3)交流帯磁率、(4)中性子散乱、(5)μSRを用いてスピングラスSG系、クラスターグラスCG系および異方性競合系の性質を多角的に調べた。主な結果は[A]SG系、CG系:(1)SG系FexMni-xTiO_3(FMT)について零磁場冷却磁化M_<ZFC>の長時間緩和をM_<ZFC>-T面(H一定)およびM_<ZFC>-H面(T一定)でtwだけ測定した後に温度(磁場)を上昇させたときの応答から、M_<ZFC>は(T,H)の関数であるが、一方で、(T,H)一定の下で長時間緩和を示すという相い矛盾する性質をもつことを示した、(2)SG系FMTにおいてT<T_<SG>でM_<ZFC>(T,H)の値が同じであれば、ZFC条件下でどのような過程を経てその値に到達したとしても、その後のスピン系の長時間緩和は同じであることを見い出した。SG系に共通した性質であると推定している。(3)SG系FMTについて、ZFC条件で磁化過程の磁場掃引速度SWR依存性を調べたところ、SWRを大きくしていくとM_<ZFC>が磁場中冷却の磁化M_<FC>の値へ異常なとびを示すことを見い出した。M_<FC>が磁場中での安定状態であることを示すと同時に、多谷階層構造モデルを支持する結果である。(4)CG系FexMg_<1-x>TiO_3について磁化の緩和現象に温度サイクルおよび磁場の及ぼす影響を調べて、CG系も多谷階層構造で説明できることを示した。(5)μSRの測定結果から、CG系においてはSG系に比べて凍結温度Tfに対してより高温からミューオン静止位置に内部場が出現すること、Tfのまわりの臨界温度領域が非常に広いことが明らかになった。Tfより遥かに高温で磁気クラスターが形成されることによる。[B]異方性競合系FexC_<o1-x>TiO_3において、スピンの横成分と縦成分の伸び縮みを伴ってスピンフロップ転移が発生することを見い出した。両スピン成分が結合していることを示すものである。
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