ダイヤモンド・アンビル・セルとSQUID振動コイル型磁束計の組み合わせからなる本研究課題の装置は、これまで技術的に難しいとされていたピストン・シリンダー方式を遥かに越える圧力領域での精度の高い磁化測定を可能にした。現在では、13GPaまでの圧力下1.4〜30Kの温度範囲での磁化測定が可能であり、これまでに磁性半導体EuTeの圧力誘起強磁性や擬2次元強磁性体K_2CuF_4の高圧下での強磁性の消失などを見いだしてきた。しかし、一歩踏み込んで磁性の詳細を調べるには、感度や測定温度範囲に関して現状のシステムの能力はまだ十分ではないため、性能向上を行わなければならない。本課題では、そのような目的で新しいクライオスタットを開発し、感度、温度、圧力に関して性能をこれまでに比べて大幅に向上することが出来た。感度を上げるには測定磁場を大きくしなければならないが、これまでバックグラウンド磁化が大きいため30e以上の磁場をかけることは出来なかった。今回、検出コイルの上下に設けた2組の補償用マグネットにそれぞれ逆向きの磁場を発生させることにより、バックグラウンドの原因である磁場勾配の補償を効率良く行うことが出来、24Oe以上まで磁場を印可することが可能になった。最大磁場の増加に伴い、ノイズの大きさが磁場の大きさにほとんどよらないことから感度を一桁上げることが出来た。測定温度に関しては、DACとアクチュエータの断熱を良くすることにより、これまでの温度上限の2倍以上の70K付近まで測定精度を落とすことなく温度を上げることが出来るようになった。また、圧力に関しては、100GPa以上発生することが出来るようになり、超高圧下での圧力誘起超伝導の探索や100GPa領域での磁性体の研究等応用範囲を格段に広げることが可能になった。
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