研究概要 |
強磁性体スピン波系に対して,高電力マイクロ波による非線形励起(パラメトリック励起)を行うと,特定の波数を持ったマグノンのみが強く励起されて増大するため,マグノン非平衡状態を作り出すことが出来る.これらのマグノンが直接に,あるいは,マグノン間散乱過程により別の周波数のマグノンとなり間接に,マイクロ波を放射する,即ち放射緩和が起こることが期待される.したがってマグノン系からのマイクロ波放射を検出することにより,マグノン間相互作用あるいはマグノン凝縮状態に関するデータが得られると思われる. 実験はイットリウム・鉄・ガ-ネットの球状単結晶の磁化容易軸である[111]軸方向に静磁場と9GHz帯マイクロ波磁場を加える平行励起法で行った.放射マイクロ波の観測は試料の周りに巻かれたピックアップコイルにより,その出力をマイクロ波・スペクトラム・アナライザで行った.検出感度は10^<-16>-10^<-17>Wである.その結果,外部静磁場1000-1300Oe周辺でマグノンバンドの底の周波数に近い 1.3-1.5GHz の微弱なマイクロ波が検出された.さらにその2倍及び3倍のマイクロ波も同時に観測された.これらの周波数は励起マイクロ波の周波数とは比例関係にはなく試料から放射されたものである.また励起周波数の1/2周波数のマイクロ波も観測された.共鳴吸収が起こる磁場以外では観測されないので,これも試料が発するものと考えられる。パラメトリック励起されたマグノンがマグノン間散乱によりエネルギーを失い,やがてマグノンバンドの底に集まって凝縮状態になることが予想される.今後さらにこれらのマイクロ波の特性を詳しく測定し,マグノンの非平衡状態を調べることにしている.
|