研究概要 |
強磁性体スピン波系に対して,高電力マイクロ波による非線形励起(パラメトリック励起)を行うと,特定の波数を持ったマグノンのみが強く励起されて増大するため,マグノン非平衡状態を作り出すことが出来る.これらのマグノンが直接に,あるいは,マグノン散乱過程により別の周波数のマグノンとなり間接に,マイクロ波を放射する.すなわち放射緩和が起こることが期待される.したがってマグノン系からのマイクロ波放射を検出することにより,マグノン間相互作用あるいはマグノン凝縮状態に関するデータが得られると期待される. 放射マイクロ波を検出する実験は室温でYIG(イットリウム・鉄・ガーネット)の直径0.8mmの球状単結晶の磁化容易軸である[111]軸方向および単結晶薄膜の膜面内([111]軸に垂直)に静磁場と9-16GHzマイクロ波磁場を加える平行励起法で行った.放射マイクロ波は試料の周りに巻いたピックアップコイルにより検出し,マイクロ波放射が始まる閾値とスピン波不安定化閾値の磁場変化を測定した.またマイクロ波シンセサイザにより最大25dBmまでの励起マイクロ波を加えて,検出した放射マイクロ波をスペクトラムアナライザで解析した.そのスペクトルは励起周波数の1/2のシングルピークの場合と,1/2励起周波数の周辺で複数のピークを持つ場合とがある.またパルスマイクロ波で励起して,そのパルス後に放射マイクロ波強度が緩和する時間変化を測定したところ減衰定数は約19μsと求まり,スピン波不安定化閾値か,ら求められるスピン波緩和時間とよい一致を示した.
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