研究概要 |
本研究は近藤半導体CeRhSbとCeNiSnにおける微視的特徴を明らかにすることを目的としたラマン散乱による実験的研究である.また,上記物質以外にも,f電子系における半導体電気伝導性とエネルギーギャップの知見を得るために為に,YbB_<12>やLaB_<12>についても行った.以下得られた主要結果をまとめる. (1) CeRhSbやCeNiSnにおける250cm^<-1>以下のエネルギー領域に現れるピークは,GF行列法を用いた格子振動解析から格子振動であることが分かった.また,規準振動解析から,CeRhSbではRh-Sb間の原子間相互作用が0.4mdyn/A程度で,CeNiSnの0.3mdyn/Aに比べて大きいこと,さらに,CeNiSnはb-軸方向の異方性が強いことが明らかになった. (2) 格子振動については,CeRhSbの3本の格子振動の振動数が低温で低下する異常が観測された.規準振動解析より,この異常を示す格子振動は主にCeの振動であり,これは,Ceイオンのスピン磁気系と格子系の間に相互作用が存在する事を実験的に示したものである. (3) CeRhSbとCeNiSnには,室温で幅広いバックグランドスペクトルが観測されるが,温度約30K以下になると,低エネルギー領域の散乱強度の減少が観測された.このスペクトル形状はV-字型状態密度で良く再現でき,得られたパラメーターも比熱やNMRで報告されている値と矛盾が無いことから,このギャップはスピンギャップであることを明らかにした. 以上の結果はラマン散乱が重い電子系の微視的特徴を明らかにする上で有力な手段であることを示している.また,一部はすでに公表されているいるが,現在未公表部分の執筆作業を行っている.
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