研究概要 |
CeNiSnは、発見以来、高濃度近籐効果によって増強した準粒子バンドに低温でギャップを開く「近籐半導体」として注目を集めて来た。しかし、最近単結晶の純良化により、その電子基底状態は,ごく最近になってギャップ中に僅かに状態が存在する半金属状態では無いかと考え始められている。もしそうであれば、この小さなエネルギースケールに存在する半金属状態は、高濃度近籐効果によって実現する基底状態として、新奇の状態であり、高濃度近籐効果による強相関電子状態解明への重大なヒントとなりうる。このことから、CeNiSnはこれまで以上に世界的に注目されている。本研究は、このCeNiSnの電子基底状態の解明を目標とする。 本年度は,まず購入備品を現有の希釈冷凍機に装着し稼動する状態にし低温強磁場における物性測定環境を整えた。次に,この装置を用いて比熱を測定するための専用セルを制作した。比熱測定では,試料温度の精密測定が最も重要である。低温かつ強磁場中で使える温度計としてRuO_2酸化膜抵抗体を選択し,これの精密な磁場中温度較正を行った。以上の作業により,温度は0.1Kまで磁場は5Tまでの測定が可能となった。本装置を用いてCeNiSnの磁場中比熱の測定を行った。解析の結果,CeNiSnの電子基底状態は,やはりこれまで信じられてきた近籐半導体ではなく,新しいタイプの強相関金属状態であるらしいことが初めて分かった。次年度は,50mKで10Tまでの比熱測定を可能にし,本年度の結果を詳細に検証し,本研究の目的を達成する。
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