研究概要 |
平成10年度は,前年度に改良した装置本体にアスペクト比の異なる数種類の容器を接続し,また注入する粒状体を数種類変えて実験を行なった.粒子の移動や流体領域の成長過程を既設のビデオカメラと画像取り込み装置を利用して記録し,今年度,等該研究費で購入したコンピュータによって,それらの画像解析を行なった.空気相が少ない状態では,粒子のランダムな充填により実質的に応力の掛らない領域が形成されることは予想されていたが,それが振動的圧力,粒子再配置や空気相の侵入による摩擦力の減少などによってどのように寸断されて流動化がおこるか,また流動化によってどのような粒子集合体が形成されるかに着目して実験を行なった.これまでの実験から,摩擦の大きい粒状体の薄層に振動を加えた場合には,非常に特徴のあるパターン形成や波動現象が見い出されている.これらは表面形態の自己組織化の技術として工学的に利用できる可能性があり,さらに詳しい研究が望まれている.また,そこでの粒子の拡散については従来のランダム系で知られていたブラウン運動とも,少数粒子系に特有の弾道学的な振る舞いとも異なる特異な指数法則が見い出され,メソスコピック物理学の構築に一つの手がかかりを与えた.これらについては,昨年7月に北京で開催された国際学会(The Third Internaional Congress on Fluid Mechanics),9月の物理学会,11月に本申請者が代表者となって開催した京都大学数理解析研究所の研究集会「複雑流体の数理」などにおいて発表された.
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