研究概要 |
1,2つの物体間の摩擦の問題を1次元モデルに基づいて調べ、乱れの影響や特異なピン止め効果を議論した。まず、乱れの効果を数値的に調べ、乱れがない場合に存在する最大静摩擦力が0の状態は乱れに対して不安定であり、乱れがあると常に有限の最大静摩擦力が現れることを示した。この振る舞いは電荷密度波の不純物ピン止めの理論により良く説明される。 さらに摩擦力の速度依存性を摂動論により調べ、構造との関係を議論した。また、フォノンの振動数に現れるギャップの大きさが物質の弾性定数の関数として見た場合、フラクタル的な振る舞いを示すことがあることや、ある有限の領域内で最大静摩擦力が0になるなど特異なピン止め効果が現れることを見いだした。これについては現在投稿準備中である。 2,非対称周期ポテンシャル中の粒子が交流外力や雑音のもとで自発的な流れを生じる系はラチェットと呼ばれ、分子モーターの機構やマイクロマシーンでのモーターとして注目を集め、精力的な研究が行われている。通常、摩擦は運動を妨げるものだるが、ラチェットでの流れは摩擦があって初めて現れるもので、ここでは摩擦が運動を引き起こす。これまでの研究では系は古典力学に従うとして行われてきたが、我々は量子力学に従った運動を行う量子ラチェットを提案してその運動を調べた。まず、オン-オフを繰り返す非対称ポテンシャル中の、熱浴と相互作用する粒子の運動を密度行列の方法により調べ、この系での流れが熱浴との相互作用の結果生じる新しいタイプの量子効果であると考えられることを示した。また、一定の非対称ポテンシャル中で交流外場を受けているラチェットの問題も、経路積分の方法により調べた。この場合、熱浴との相互作用はCaldeira-Leggetにならって取り入れている。この場合にも、系は自発的流れを生じることがわかった。
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