研究概要 |
1, 2つの物体間の摩擦の問題を2次元モデルに基づいて調べ、乱れの影響や特異なピン止め効果を議論した。2次元の場合、滑る方向と結晶軸の関係が問題となる。我々はまず、乱れが無い場合に注目し、上記の効果を数値実験により調べた。その結果、摩擦力は滑る方向と結晶軸の間の角度の函数として極めて複雑な振る舞いをすることがわかった。さらに乱れの効果、運動状態での原子位置の相関についても調べた。 2, 電荷密度波のピン止めと電場によるそのはずれは固体中の摩擦現象の典型例の一つである。これまで、整合電荷密度波の格子によるピン止め、不整合密度波の不純物による密度波のピン止めなどは議論されてきた。しかし現実の整合密度波系でも不純物は存在する。我々は不純物ポテンシャルが一つある場合の整合電荷密度波の電場によるピン止めのはずれを例にとってこの問題を調べた。その結果、不純物ポテンシャルの存在のより、ピン止めのはずれが起こりやすくなる場合があることがわかった。1次相転移などでの核形成の問題の理論的研究は一様な系において行われてきた。しかし、系の中の不純物などの非一様性が核形成確率を増大させる効果は、様々な場合に現れると考えられる。今の問題はこのような問題ともつながる。 3, 有機擬2次元系において、スピン密度波の運動によると考えられる非線形伝導が観測されてきたが、そこでの謎の一つはその有効質量が電荷密度波とほとんど変わらないということである。最近、これらの系のスピン密度波相において電荷密度波がたっていることの証拠が実験的に観測された。これにより有効質量の問題は解決するが、次の問題はどのようにしてスピン密度波と電荷密度波の共存状態が可能かというものである。我々は格子の自由度まで考慮に入れた2次元拡張ハバードモデルに基き、そのような共存相が現われることを示した。
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