研究概要 |
本科学研究費の補助のもとで,我々は2個のS=1/2スピンと2個のS=1スピンが交互に並んでいる1次元量子スピン系の基底状態の性質を,数値的方法および解析的方法を用いて研究した。この系において,各最近接スピン間に等方的な交換相互作用を仮定し,S=1/2スピン間,S=1/2スピンとS=1スピン間,S=1スピン間の交換相互作用定数を,それぞれ,J_1,J_2,J_3(正の場合反強磁性的,負の場合強磁性的)とする。 1.基底状態相図:Wigner-Eckartの定理の適用や摂動計算などの解析的方法および密度行列繰り込み群法,量子モンテカルロ法,有限系の厳密対角化法などの数値的方法を用いて,J_3の値をJ_3=1に固定したときのJ_1(J_1>0)対J_2平面上の基底状態相図を決定した。この結果,上記平面上に2次相転移に関連した4本の相境界線(massless line)が存在し,これらによってこの平面が6つの領域に分けられ,従って,6つの異なる相が出現することが明かになった。また,種々のJ_1(>0),J_2の値に対して,基底状態における最近接対スピン相関関数を計算し,その結果を参考にして,得られた6種類の相がVBS(Valence-Bond-Solid)描像を用いてどのように表されるかを明かにした。 2.基底状態磁化曲線:坂井・高橋によって提唱された,有限系の厳密対角化法と共形場理論とを組み合わせた方法を用いて,種々のJ_1(>0),J_2の値(ただし,J_3の値はJ_3=1に固定)に対する基底状態磁化曲線,および,J_1(またはJ_2)対H(外部磁場の大きさ)平面上の基底状態相図を計算した。その結果,多くの場合,基底状態磁化曲線にいわゆる2/3-plateauおよび1/3-plateauが出現するが,特にJ_1=1,J_2、【less than or similar】0.7では1/3-plateauは消失し,2/3-plateauのみが現れることなどが明らかになった。このようなplateauの出現,消失の現象は,1.の研究で明らかになった基底状態に対するVBS描像を用いて説明することが出来る。
|