種々のランダム性が相転移や臨界現象に及ぼす効果は興味はある研究対象であり、本研究の目的は、大規模なモンテカルロシミュレーションにより、ランダムスピン系に関する精度の高い情報を得ると同時に、純理論的解析をおし進めることにある。特にスピン系の相転移と幾何学的パーコレーションとの関係や異方的形状をもつスピン系の相転移における有限サイズスケーリング、複雑液体を含む多彩な相の相分離過程などに興味を持って研究を行った。 スピン系の相転移をパーコレーション問題として扱い、スピン系の相転移を幾何学的に理解することを試みた。特に系の縦横比が1と異なる有限系のイジングモデルにおいてはパーコレートしているクラスターが複数存在することが、系の形状効果を特徴付けることを示した。このことをランダム希釈スピン系へ応用し、幾何学的なパーコレーション転移から熱的な総転移へのクロスオーバーを論じた。 異方的な形状をもつイジングスピン系の有限サイズスケーロング関数の異方性パラメータ依存性を論じた。異方的な3次元イジングモデルについては、層状イジングモデルの相転移点におけるスケーリングとの関係にも着目し、2次元、3次元的有限サイズスケーリングの統一的な理解を得た。 また、ずり流動場中の相分離動力学のシュミレーション手法として、Kawasakiダイナミクスに従って時間発展するイジングモデルに隣接層の時間的なずりを導入するモデルに基く新しい手法を開発した。この新しい手法を用いて、ずり流動場中の相分離の後期過程の異方的成長則を論じた。
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