シリコンを対象として、圧力下での構造相転移を調べた。今年度はイオンの数を8個から64個に増やすこと、及びより正しく金属状態を取り扱うために準位の部分占有率を考慮することの2点を中心に研究を行った。 昨年度は、計算時間の問題等のため8粒子系でシミュレーションを行なっていたが、これを64粒子系へ拡張した。平面波展開の波紋のブリルアンゾーン内でのサンプリングはP点(R=0)のみに限った。8粒子系と同様にダイアモンド構造より40GPa付近への加圧、細密充てん構造よりの減圧のシミュレーションを行なった。 昨年度までは、フェルミ準位以下の準以のみが完全に占有されるという取扱いを行っていたが準位の間隔が狭くなる金属状態では、この取扱いは不充分と考えられる。シリコンの高圧相(β-すず、単純六方)において、実験的に得られる構造と対称性が異なる結果が得られていた。 準位の部分占有を考慮して、この不一致が解決するかどうかを調べた。部分占有を考慮する方法としていくつか提案されているが、その多くは準位の分布の幅を小さく押さえようとすると、計算がうまく実行できないことがわかった。そのため、フェルミ分布関数の形に部分占有率を仮定して取扱う方法を用いて、β-すず構造の対称性が回復するかどうか調べた。結果は部分占有を考慮しないときと同制度の歪が生じた。
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