昨年度までの研究で明らかになったシミュレーションによって得られる結晶構造の対称性が金属相において実験で得られているものと異なる問題を、対象をシリコンの高圧相(β-錫相、単純六方相)に限り、次の2つの方法で調べた。 準位の部分占有を考えない取り扱いでは、原子数を8個から64個に増加して、圧力誘起の相転移・各相の安定性を調べた。この取り扱いではk点サンプリングはΓ点に限っている。ダイアモンド相に圧力を加えていくと、単純六方相および体心立方相への相変化が起こった。この計算条件の下では、最安定相は圧力の増加とともに、ダイアモンド相→単純六方相→体心立方相の順で変化する。体心立方相が安定相として出現するという点で、まだ実験結果と一致していない。 準位の部分占有を許した取り扱いでは、原子数は8個に限ったがk点サンプリングの数を8点、64点、512点と変え、金属相であるβ-錫相、単純六方相の結晶対称性がどのように実験値に近づいて行くかを調べた。k点サンプリングの数を増すにつれて、単位格子の辺の長さ、角度の実験値からのずれが小さくなって行くことが確かめられた。これにより、結晶構造対称性をよりよく再現するためには、k点サンプリングの数を多くする必要があることが確かめられた。
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