本研究で目標としているのは、渦運動と衝撃波および音波との強い相互作用の研究である。これは物理的には純粋に場と場の非線形相互作用の問題であり、応用面では高速流の騒音発生のメカニズムを明らかにすることに対応する。 実験に使われた設備は、無隔膜衝撃波管とノズル、および観測のための光学系(凹面鏡・レンズ系、パルス光源)、および音響学的検出装置、などである。既設の無隔膜衝撃波管によって、衝撃波と渦輪の両方が作られる。その相互作用は極超短時間の過程で、これまでの実験ではシャド-グラフを撮り、スキャナーでディジタル画像にして、コンピューターで画像解析を行ない、データの解析を行なった。今年度の科研費でディジタル・カメラ装置とオン・ラインのデータ処理装置を設置した。これは、音響学的実験と同時にディジタル・カメラによって、渦輪と衝撃波の位置を短時間で同定するためのシステムである。 既存の精密騒音計を使って、相互作用で生じる波動の音響信号はディジタル的に記録された。それをコンピュータで処理し、散乱波が特定された。散乱波の強度は渦輪同士の衝突で生じる渦音と同程度であった。また、進行方向に垂直な方向で音圧が弱くなるという散乱に特有な特徴もとらえることができた。特に散乱波の多重極成分については、4重極性を示すデータが得られた。 渦輪に衝撃波が入射した際の散乱波の発生が、散乱理論を用いて説明された。正面方向への散乱は音の散乱理論と同じ機構で生じていることが分かり、音圧の強度についても一致する結果が得られた。後方への散乱は密度場による反射の可能性があることがわかり、二つの結果から2重極性と4重極性を示すと予想できた。
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