本研究では、渦運動と波動と相互作用の研究、および乱流場の中の渦構造の研究を目標としている。実験的には、空気中あるいは水中に強い渦を発生させ、その形状と運動の様子、および散乱波を音響学的および光学的に観測し、測定を行う。理論的には、乱流中の渦に関し、その周辺の速度場の統計法則について新しいモデルによる解析を行うとともに、直接数値シミュレーションのデータについて、その統計法則と構造との関係を明らかにする。応用面では高速流の騒音発生のメカニズムを明らかにすることを目的とする。 具体的には、渦輪と衝撃波の相互作用によって散乱される波を研究した。実験的に散乱波を観測し、測定し、さらにノイズ発生のメカニズムを考察した。渦による音波の散乱理論を渦輪と衝撃波の相互作用の問題に応用した。 また昨年度製作した乱流実験装置で、乱流場の微細構造である渦について、装置の壁面に埋めこんだ圧力センサーで圧力場の検出を行ない、自発的に生ずる細い渦によると思われる圧力信号を得た。 乱流場の統計法則を、乱流場で歪み変形を受ける渦、すなわちバーガース渦のアンサンブルの統計法則によって研究した。2点間の速度差の確率密度関数を求めて、速度差のn次モーメントのスケール則を明らかにするとともに、2次、3次モーメントとエネルギー散逸率について、コルモゴロフの4/5法則が成り立っていることを明らかにした。さらに、高次構造関数のスケール指数も求められた。 また平面ポアズイユ流の乱流への遷移の直接数値シミュレーションを行ない、TS(トルミーン・シュリヒティング)型の波動と渦構造、およびSV型の縦渦構造の遷移とを研究した。
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