一次相転移には、誘導期間と呼ばれる相転移が起こる前の前駆現象が観察される場合がある。この誘導期間は、古典的な核形成・成長理論では、新しい相の核が安定に存在し得るまで成長するのに必要な時間と説明されてきたが、最近新しいタイプの誘導期間の存在が指摘され始め、誘導期間における秩序形成の研究が注目されている。 本研究では、両親媒性分子/水系におけるモルフォロジー転移をそのような一次相転移のモデル系として選び、その相転移のダイナミクスを中世子小角散乱およびX線小角散乱により追跡した。 まず、両親媒性分子(C16E7)/水系でのラメラ相からキュービック相への相転移を放射光を用いたX線CCDカメラシステムを用い30msの時間分解能で観察することに成功し、相転移が始まる時にサブ秒スケールでエンブリオの生成・消滅が行われ、それが次第に安定な核へと収束していく様子が明らかとなった。 さらに、この系のカメラ相からキュービック相への相転移を流動場下で行う事により、相転移における誘導期間が著しく増大することを流動場下での中世子小角散乱により見い出した。これは、モルフォロジー転移を引き起こす両親媒性分子膜の曲率の変化を流動場により抑制したためであり、誘導期間とオーダーパラメーターの関係を直接関係づけることが出来た。
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