研究課題/領域番号 |
09640477
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
物理学一般
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研究機関 | お茶の水女子大学 (1998-1999) 東京大学 (1997) |
研究代表者 |
今井 正幸 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (60251485)
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研究分担者 |
今井 正幸 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (60251485)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1999
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キーワード | 一次相転移 / 誘導期間 / 相転移ダイナミクス / 前駆現象 / 複雑液体 / 高分子 / 界面活性剤 / 液晶 |
研究概要 |
1次相転移には、誘導期間と呼ばれる前駆現象が観察される場合がある。この誘導期間は、古典的には、核形成・成長において、新しい相の核が安定に存在し得るまで、成長するのに必要な確率的な時間であると説明されてきた。本研究では、高分子・界面活性剤・液晶分子に代表されるような複雑液体においては、その大きな内部自由度に基づく複数の秩序変数間のカップリングにより様々な相転移前駆現象が観察されることを明らかにした。 1)高分子の結晶化誘導期間における秩序形成 高分子(ポリエチレンテレフタレート)の結晶化誘導期間における秩序形成を小角X線散乱・中性子散乱・偏光解消光散乱により追跡し、高分子結晶化に際しては、最初に高分子鎖が平行に配向し(ネマティク転移)、その後、分子鎖間のアジャストメントによりパッキングが開始し、誘導期間は分子鎖のパッキングが始まる前の平行配向化の段階であることを明らかにした。また、そのメゾスケールの秩序形成がスビノーダル分解のキネティクスに従い、この実験結果が土井らの平行配向理論と記述できることを見い出した。 2)高分子/液晶系の液晶・結晶化転移のキネティクス 高分子/液晶系では、高分子濃度がある値以上になると液晶分子が結晶化することが知られている。この液晶分子の結晶化は、その秩序パラメーターが密度と配向の2パラメーター系であることから上の高分子の結晶化と類似の結晶化キネティクスが期待される。我々は、高分子/液晶系の結晶化挙動を小角散乱散乱手法とモンテカルロシミュレーション手法により追跡した。その結果、液晶分子の結晶化の前段階で液晶分子の配向秩序化が進んでいることがシミュレーションから予想されることが明らかとなった。 3)非イオン性界面活性剤/水系でのモルフォロジー転移の前駆現象 非イオン性界面活性剤/水系でのラメラ/Gyroid転移を高分解能小角X線散乱法により追跡した。ラメラ/Gyroid転移点より高温側のラメラ相においてすでに、Gyroid相に繋がる特定の波数ベクトルをもつ膜の揺らぎが発生し、温度が転移点に近づくにつれてその揺らぎが次第に成長し、最終的には、ラメラ面に穴のあいた穴あきラメラ構造が形成される事が明らかになった。この相転移の前駆現象として膜に特定の揺らぎのモードが安定化する現象は実験的に初めて確認されたものであり、モルフォロジー転移にも前駆構造が存在することを明らかに出来た。
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