研究課題/領域番号 |
09640483
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
伊藤 孝 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (60107159)
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研究分担者 |
橋本 雅人 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (00273540)
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キーワード | 高分子結晶 / ナイロン / フッ素共重合体 / 二次相転移 / 臨界現象 / イジングモデル / 秩序-無秩序型相転移 / パーコレーション理論 |
研究概要 |
高分子結晶において、二次相転移、もしくは臨界点の存在が厳密に証明された例は国内外を通じてこれまで無かった。私達は、ナイロン66とフッ素系共重合体結晶において二次相転移的挙動が生じることを発見し、その成果に基づいて本研究を計画した。本研究の成果を以下に記す。 1.偶数-偶数ナイロン結晶において、アミノ基間のCH_2基が6個以上であることが相転移を起こす必要条件であることを理論的、実験的に示した。特に、カルボキシル基間のCH_2基が0個であるナイロン62の場合には、大気圧下でも一次相転移が発現した。これはナイロン結晶では最初の発見である。 2.短形格子イジングモデルとのアナロジーによる厳密な理論解析により、この構造変化は一次・二次相転移と連続変化の様相を持ち得る、二次元系における秩序-無秩序型の相転移現象であることが明らかになった。 3.ビニリデンフロライド-トリフルオロエチレン(VDF-TrFE)共重合体結晶では、VDF分率65〜70%の領域で相転移の様相が連続変化から一次相転移へと急激に変化することが分かった。また、VDF65%の試料は高温・高圧下で二次相転移を示したが、これはナイロン66に次いで、二番目の発見例である。 4.上記の共重合体結晶における奇妙な相転移挙動がパーコレーション理論によって始めて明快に説明できた。 以上の結果は、高分子結晶としては世界で始めての、二次相転移と臨界点の厳密な発見・証明であるとともに、理論的取扱が現実の高分子結晶の相転移を実験結果との整合性を保ちつつ分子論的に厳密、簡明に記述できた最初の例である。本研究が、現実に存在する二次元系の臨界現象として、今後、相転移の理論分野に強い刺激を与え、高分子物理学の分野に新たな展開をもたらすものと考える。
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