フォノンの振動周期よりも十分に短いパルス幅を持つレーザーパルスを固体に照射すると、生成されるフォノンは振動を開始する時間のばらつきが抑えられるため、振動の位相は強め合い、巨視的に見た場合に位相が揃う。これをコヒーレントフォノンと呼ぶ。コヒーレントフォノンを生成するパルスを一つにパルスでなく一定間隔を持つパルス列にし、その時間間隔を調節することにより、特定のフォノンの振幅だけを増幅、あるいは抑制する事ができる。我々は、フォノンを制御することで光による固体表面の制御を目指している。そのためには、コヒーレントフォノンを生成し、そのダイナミクスを知ることが必要とされる。また、物質系の制御には、コヒーレントフォノンと電子系との相互作用が強いことが必要である。我々は光るによる物質中の素励起である励起子とコヒーレントフォノンの関係に興味を持った。励起子共鳴では光の非線形光学応答が強いことが知られているが、電子系とフォノンとの相互作用が強ければ、光の非線形光学応答にコヒーレントフォノンの影響も出るであろう。そのような観点から、我々は非線形光学応答とコヒーレントフォノンの関係も研究した。また、対象とする物質としては低次元物質を選んだ。次元が低いほど電子系とフォノンとの相互作用が強いからである。しかし、最初はコヒーレントフォノン観察が報告されているBi を用いて、実験系の確率を行った。以下、具体的に行った研究を列挙する。 1)コヒーレントフォノンの観測が報告されているBi を用いて、コヒーレントフォノンを生成、観測する実験条件を整える。 2)層状半導体Pbl_2中励起子共鳴のおけるコヒーレントフォノンの生成。 3)2次元物質(C_6H_<13>NH_3)_2Pbl_4の励起子非線形光学応答とフォノンの研究。 4)1次元共役系ポリマーでの励起子とフォノンの研究。
|