研究概要 |
結晶性の異なる多種類の炭素系微粒子の基本的性質と広い波長領域での光学的性質との相関性を明らかにすることが本研究の目的である。結晶性の異なる種々の炭素系の試料を用意し、それらの試料を紫外から遠赤外までの広い波長領域で測定した。また、これらの試料のサイズ、形、結晶性などを電子顕微鏡でしらべた。その結果、結晶性と遠赤外の吸収との強い相関、すなわち、遠赤外のスペクトル指数は結晶性が悪いカーボン0.6から結晶性の一番良いグラファイトの3.0へと結晶性が良くなるにつれて少しずつ増加することをはっきりと確認できた。が、中間赤外では、はっきりした相関はみられなかった。これは、生成の方法が異なるサンプルのために、同一のサンプルでも微結晶サイズの分布が大幅にばらついているためと考えられる。そこで、一定の条件の下で、ガス(Ar,He)の圧力を10Torrから80Torrとガス圧を変化させることにより微結晶のサイズをコントロールしてカーボンのサンプルを生成し、これらの中間赤外の吸収を測定し、その傾きと微結晶のサイズとの間に強い相関があることを明らかにした。すなわち、微結晶の平均サイズ6Åから8Åに増加すると傾きは0.6から1.2と増加し、はっきりとした相関のあることを確認した。 ヘリウム温度にサンプルを冷やすと、遠赤外のスペクトル指数は、全体として結晶性の悪いカーボンはどれも大きくなり、すなわち、結晶性が良くなる傾向を示す。一方、結晶性の悪いグラファイトはやはり結晶性が良くなる傾向を示すが、結晶性の良いグラファイトは室温とほとんど変化なかった。 遠赤外のスペクトル指数は結晶性と温度により変化することが明らかになった。これらのデータをまとめて、論文として発表する予定である。
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