研究概要 |
岩手山では1995年秋以降,火山性微動・火山性地震の活動が活発になっている.これらの活動の発生機構を明らかにするために,臨時地震観測,繰り返し測量を含む観測,ならびにデータの解析を行った.まだ,研究途中であるが,今年度,これまでに以下の結果が得られた. 1.岩手山を取り囲む5点の定常観測点と5点の臨時観測点で地震観測を継続した.臨時観測点の内2点は1997年9月に設置した点である.観測の結果,1995年秋から1996年夏にかけて活発であった東山腹下深さ約10kmの火山性微動・低周波地震の活動は,その後やや低調であることがわかった.一方,これに代わって山頂付近浅部の高周波地震活動が活発になった.さらに,1997年12月以降は,南西山腹下3-4km付近で数Hzの卓越周波数をもつ地震が繰り返して群発していることが明らかになり,地震活動の変化が明瞭に把握された. 2.岩手山の北東,南東,南西に位置する3観測点で,孔井式歪計・傾斜計を用いて観測された地殻変動データの解析から、1996年8月に山頂直下浅部における増圧による可能性がある変動が見いだされた.その変動源は山頂直下の震源域とほぼ一致している.また,1997年末末からは山頂部の隆起を示す可能性のある変動が発生していることが明らかになった.この変動の開始時期は,南西山腹の地震活動が活発になった時期にほぼ対応しており今後の推移が注目される. 3.山麓の7点でGPS観測を実施し,6点で精密重力測定を繰り返して実施した.しかし,これらの観測からは有意な変動は観測されなかった. 以上の結果から,岩手山の浅部では小規模ながら火山活動が活発になっていると推定される.より詳細を解明するために,来年度も観測と解析を継続する.
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