研究概要 |
本年度は,伝播経路に沿ったP,S波振幅減衰が観測点ごとに,入射角,方位,および震源距離の1次関数で近似できるものと仮定して,P,SH,SV波振幅とP波初動の極性を用いて,多数の微小地震のメカニズム解とこれらの関数の係数を同時推定する手法-震源位置に依存する観測点補正値を用いた,連係メカニズム解推定法-を開発した.さらに,P波初動極性データのみでなく,P,SH,SV波振幅をも入力データとする,断層面と応力テンソルの同時推定法を開発した. 連係メカニズム解推定法を,1996年鬼首地震の余震のデータに適用したところ,振幅データを用いることにより,P波初動極性データだけではメカニズム解が決められない微小地震を含め,170個の地震のメカニズム解が得られた.余震のメカニズム解の多くは,P軸がほぼ水平で,その方位が東西方向である.一方,T軸は,深さ5km以浅では鉛直方向,5km以深では水平で南北方向が卓越していることが示された. また,応力テンソルインバージョンにより推定された鬼首地域の最大主応力軸は東西方向,中間主応力軸は南北方向,最小主応力軸は鉛直方向である.本震の断層面(逆断層)近傍の領域と,M5.7の地震の断層面(横ずれ断層)に隣接している領域では,最大主応力軸の方向に約15度の違いがある.一方,応力テンソルインバージョンにより推定された余震の断層面は,必ずしも本震やM5.7の横ずれ断層の地震の断層面に平行なものだけではなく,それに共役のものも多いことが明らかになった. 以上の結果は,開発した連係メカニズム解推定法,応力テンソル推定法によって,よりマグニチュードが小さい微小地震のメカニズム解を精度良く推定できること,応力場の情報をより詳細に抽出できることを示している。
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