研究概要 |
今年度は1998年8月3日に福島県西郷村で発生したM4.9の地震について,DATレコーダを用いた臨時地震観測を行い,そのデータをもちいて,余震の震源決定ならびにモーメントテンソル解の決定をおこなった.臨時観測は1998年8月5日から8月24日までの期間に5台のDATレコーダを用いた連続観測をおこなった.得られた余震の震源分布は東北大の定常観測網により求められた震源分布を同様に東傾斜の分布を示す.この傾向は東西圧縮の逆断層型を示す,本震のメカニズム解の節面の1つと一致する.余震のメカニズム解の推定にはKikuchi&Kanamori(1991)のモーメントテンソルインヴァージョン法を用いた.得られた余震のメカニズム解の多くは本震と同様の東西圧縮の逆断層型の解であるが,いくつかの余震についてはそれと異なる型の解が得られた.そのような余震は本震断層の端に多く発生する.その理由としては本震ですべりをおこした周りでは応力集中が生じ,広域応力場からの応力の擾乱が生じたものと思われる. また,1998年9月3日に岩手県雫石町で発生したM6.1の地震についてもDATレコーダを用いた臨時地震観測を行い,そのデータをもちいて,余震の震源決定ならびにメカニズム解の推定を行った.臨時観測は1998年9月4日から11月3日までの期間に計13台のDATレコーダを用いた連続観測をおこなった.えられた余震の震源分布は西傾斜の分布を示す.この傾向は東西圧縮の逆断層型を示す,本震のメカニズム解の節面の1つと一致する.なお,震源分布を地表に延長すると西根断層群の地表トレースと一致することからこの地震は西根断層群の活動であると推定できる.また,余震分布にはいくつかのクラスターがみられ,余震活動が複雑な様相を呈していることが分かった.余震の押し引きによるメカニズム解は本震と同様の東西圧縮の逆断層型の解が得られた.
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