研究概要 |
本研究は,現場観測に基づいて地震の遠隔トリガリング現象の実体を明らかにし,その発生メカニズムを解明することを目的とするものである.具体的には,岩手県西部の葛根田地熱地帯に,微小地震観測点を設け,約2年間にわたり高感度の連続観測を行うものである.本年は,観測の初年度に当たり,主に,葛根田地域の観測点の設営及びその維持を中心に進めた. 1. 高精度微小地震観測:葛根田地熱地帯において新エネルギー・産業技術総合開発機構により実施されている孔内微小地震計上下動1成分の連続記録の取得を1998年5月18日より開始した.同年8月6日まで良好な連続記録を取得することができた.しかし,同年9月3日の岩手県内陸北部地震(M6.1)により,観測点近傍の道路が土砂崩れ等のため閉鎖され,1999年3月現在,データの収録は再開されていない. 2. 広帯域地震観測:広帯域地震計(STS-2型)を葛根田地域東南東約10kmに位置する東北大学理学研学科玄武洞観測点に設置し,1998年4月2日より連続記録の取得を開始した.サンプリング周波数50Hz,分解能24bitで高精度の波形データを取得し,1999年2月末現在まで,葛根田地熱地域及び岩手火山で発生した多数の微小地震及び長周期表面波の卓越する遠地地震を良好に記録している. 以上の通り,本年度は,地熱地域で発生する微小地震と遠地地震の波形記録を収集した.1998年9月3日の岩手県内陸北部地震(M6.1)被害により,地震発生以降,葛根田地域での孔内微小地震計データの収集は行えていないが,来年度のできるだけ早い時期に再立ち上げを行う予定である.また,孔内地震計記録の欠測期間は,玄武洞観測点の広帯域地震計の記録を使用し,解析に利用する予定である.
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