南九州を東西に横断する側線上の26点において比抵抗構造調査を実施した。このデータに既存のデータを加えることで霧島火山群、人吉盆地を東西に横切る領域がカバーされ、鹿児島地溝の北端部の構造を明らかにすることが可能となった。解析の結果、霧島火山群などでは地下数100m付近にΩ・m程度の浅部低比抵抗域、深さ10〜20km付近に10〜30Ω・m程度の深部低比抵抗域が存在するのに対して、九州東岸などの非火山地域ではそれらの低比抵抗域が欠如していることがわかった。これらの低比抵抗域の分布を検討したところ、浅部低比抵抗域は霧島火山群や北薩の金鉱山の分布域に対応し、高温の温泉の分布とも一致することから、熱水変質を受けた層に対応することがわかった。また深部低比抵抗域は、上記の火山地域においてより低比抵抗になる傾向を持つものの、その分布域は火山地域に限定されていない。たとえば、火山活動が報告されていない人吉盆地を含む霧島-阿蘇の火山のギャップの地域においても。火山フロントよりも西側では深部低比抵抗域が広がる傾向を見せている。こうした結果は、第1近似的には、深部低比抵抗域の分布は火成活動の分布に関わりを示唆しているが、地溝帯の生成には直接的には関与していないように見える。しかし、比抵抗の値や深さについての検討を十分に行えば何らかの情報が得られる可能性は残されており、平成10年度の研究では九州中北部の調査を行うとともにより分解能をあげた構造で議論を行う予定である。
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