研究概要 |
平成9年度に南九州を東西に横断する測線上の26点,平成10年度に9年度の調査領域の北側に当たる宮崎県北部の13点において比抵抗構造調査を実施した.このデータに既存のデータを加えることで霧島火山群,人吉盆地を含む南九州を東西に横切る領域がカバーされ,鹿児島地溝の北端部の構造を明らかにすることが可能となった.解析結果に南九州の火山の活動年代などの知見を加えて検討した結果,以下のことが明らかとなった.火山地域の比抵抗構造は表層,浅部低比抵抗域,基盤層,深部低比抵抗域の4層で代表される.浅部低比抵抗域は霧島火山群や北薩の金鉱山の分布域に対応し,高温の温泉の分布とも一致することから,熱水変質を受けた層に対応する.この層は霧島火山群や宮之城盆地,大口盆地などの最近数百万年に火山活動があった地域に分布するが,一部は人吉盆地や中部九州の非火山地域にも見られる.一方,深部低比抵抗域は,霧島火山群から人吉盆地へと北に伸びる傾向が見られる他,宮之城盆地,大口盆地を経て人吉盆地から更に北に伸びる傾向も見られる.こうした結果から,以下のことが推定される.浅部および深部の低比抵抗域の分布は火成活動の分布と密接に関係している.低比抵抗域の分布範囲は鹿児島地溝の東側ではよい一致を示すが西側では一見一致していない.しかし,宮之城から大口に至る地域が張力場によって陥没を起こした地域であることを考えると,低比抵抗域は地溝帯を含む陥没地域およびその延長上に分布しているようである.今後は,比抵抗の値や深さについての検討を行い,より分解能をあげた構造で議論を行う予定である.
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