本研究では、爆発的な噴火の数値モデルを開発するとともに、主にフィリピンピナツボ火山1991年噴火の観測結果に基づいて、堆積物の粒径分布、構成粒子の形状から爆発噴火のダイナミックスや爆発的噴火におけるマグマの破砕過程を明らかにする手法を開発した。 理論モデルに関する研究成果は以下の2点である。第一に、発泡しつつあるマグマの火道中の定常上昇運動についてのモデルを構築した。その結果、火道中のマグマの破砕面前後で液相と気相の相対速度が生じた場合、従来報告されているマグマの上昇様式と定性的に大きく異なる様式でマグマが上昇する可能性があることが示された。、また、爆発的な噴火によって生ずる火山噴煙のダイナミックスを数値的にシミュレートする計算コードを開発した。 観測に基づく研究としては、ピナツボ噴火の降下軽石層の粒径分布から噴火のダイナミックスの再現と総噴出量の推定を行なった。また、火砕物ガラスおよび結晶の破砕直後の初生粒径分布を求めた。重要な結論として、爆発的な噴火では、火砕物全体の7割以上、またマグマ中の結晶のおよそ6割が極細粒に破砕され、大気中に拡散してしまうという知見を得た。細粒火山灰中のガラスと斜長石結晶の破砕直後の初生粒径分布が系統的に異なること、また、火砕物の詳細な形状観察や、極細粒火山灰の粒径分布が軽石の気泡の大きさや気泡壁の厚さのスケールに影響を受けていることから、極細粒火山灰を形成する破砕過程が主に気泡の破裂に因る可能性が高いことが明かとなった。同様な手法は、浅間火山1783年噴火、諏訪瀬火山1813噴火の噴出物にも適用された。特に、浅間火山1783年噴火については、古文書の記載と堆積物の比較から、噴火推移および噴火のダイナミックスを詳細に再現することができた。
|