本研究の目的は、日本列島とその周辺で発生した歴史地震のうち、マグネチュード6.5程度以上の主要な被害地震について、既存の歴史地震カタログを再検討し、それぞれの地震が主要なテクトニック要素のうちのどれで発生したかを推定し直して、歴史地震活動を主要な地体構造別に分類するとともに、日本列島全域において、各地体構造間に地震活動の相互連関(続発生や相補性など)があるかどうかを検討するものである。 まず、歴史地震を分類するためのテクトニック要素(地体構造区分)の検討をおこなった。その結果、まだ暫定的で今後変わりうるが、次のような13の区分を設定した:(1)琉球弧、(2)日向灘、(3)フィリピン海スラブ、(4)南海トラフ、(5)西南日本外帯、(6)西南日本内帯、(7)伊豆弧北部、(8)相模トラフ、(9)南関東、(10)日本海東縁〜東北日本内帯、(11)東北日本外帯、(12)太平洋スラブ、(13)千島〜日本海溝沿い。 また、既存の歴史地震カタログにもとづいて作業用のデータベースを構築するための基礎作業をおこなった。『理科年表』の「日本付近のおもな被害地震年代表」や『新編日本被害地震総覧』などの記載をインデックス代わりにするが、それらの「定説」を再検討することが課題の一つであるから、異説とその根拠、とくに根拠たなる地震史料を重視する。そのために、地震史料についても主要なもののデータベース化に着手した。具体的な調査・検討は来年度であるが、一例として、1819(文政2)年の近江を中心とした地震が「(3)フィリピン海スラブ」に分類されるのではないかというような結果を得ている。
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