本研究の目的は、日本列島とその周辺で発生した歴史地震(1872年まで)のうち、マグニチュード6.5程度以上の主要な被害地震について、既存の歴史地震カタログを再検討し、それぞれの地震が主要なテクトニック要素のうちのどれで発生したかを推定し直して、歴史地震活動を主要な地体構造別に分類するとともに、日本列島全域において、各地体構造間に地震活動の相互連関があるかどうかの検討を試みることであった。 まず、歴史地震を分類するためのテクトニック要素(地体構造区分)の検討をおこない、次のような16の区分を設定した:(1)琉球弧、(2)日向灘、(3)フィリピン海スラブ、(4)南海トラフ、(5)西南日本外帯、(6)中央構造線、(7)西南日本内帯、(8)中部日本衝突帯、(9)伊豆弧北部、(10)相模トラフ、(11)南関東、(12)日本海東縁〜東北日本内帯、(13)東北日本外帯、(14)太平洋スラブ、(15)千島〜日本海溝、(16)太平洋プレート。 次に、既存の歴史地震カタログをベースにして、さらに異説とその根拠などを重視して、作業用のデータベースを作った。それにもとづき、必要な場合はもとの地震史料を再吟味し、また震源が正確に求まっている最近の地震の震度や津波の分布とも比較して、とくに深さに注意して一つひとつの歴史地震の震源位置を見直し、地体構造区分のどれに属するかを推定した。その結果、従来内陸活断層に直接関係すると考えられていたいくつかの大地震が、フィリピン海スラブに分類されるというような新しい知見を得た。すべての結果を地体構造区分と発生年代の時空間分布として見ることにより、南海トラフの巨大地震の発生が西南日本内帯〜日本海東縁〜東北日本内帯の地震発生と関連しているという特徴が指摘された。
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