地球内部の熱的状態を研究する目的で高圧高温における地球深部物質の熱拡散率と熱伝導率の測定実験を行った。 一次元的非定常パルス加熱の測定法を用いた。寸法の相等しい薄い円板形状の試料を3枚合わせ、その合わせ面の一つを一発のパルス電流で瞬時過熱し、もう一方の合わせ面の温度の過渡的変化を捉える。温度変化の時間経過から熱拡散率が求まり、また加熱電力が既知なので熱伝導率も求まる。試料の直径は4mm、全厚は1mm内外である。パルス加熱には金属ヒーターを用い、その厚さは0.03mm、切り込みがあって一様に発熱する。温度変化を捉えるセンサーには厚さ0.03mmの扁平な熱電対を用いた。加圧は6-8分割球高圧装置USSA-1000で行った。アンヴィルの切り落とし長さは11mmで、これに辺長18mmのマグネシア八面体圧力媒体を用いる。高温で測定する場合、試料を昇温するための発熱体の形は、試料が寸胴なことと測定用の電極の取り出しの位置関係を考え平板として、これで試料部分を上下から挟む。昇温には大電流の交流による誘導障害を避けるために直流電源を使用する。 測定圧力は8.2GPaまで、温度は1000Kまでである。熔融石英・ザクロ石・カンラン石について測定した。熱拡散率と熱伝導率とも高圧の測定値を0GPaに外挿した値は既存のデータとよく一致することがわかった。高圧での熱拡散率と熱伝導率の測定値も既存のいくつかの値と矛盾しない。また測定の再現性は熱拡散率で7%以内、熱伝導率で15%内外である。圧力効果は熱伝導率・熱拡散率ともザクロ石で1GPaにつき2%〜3%、カンラン石のb軸方向で5%であった。ザクロ石の熱拡散率の温度変化は常圧下と同様に緩やかな傾向にある。 データ収集のS/N比とダイナミックレンジを大きくとって測定の再現性を良くし、とくに熱伝導率の測定精度を上げることが当面の課題である。今後は上部マントルの温度圧力条件での測定を目標にする。
|