西部阿寒帯海域は北太平洋中層水の形成場所の候補として挙げられ、気候変動を引き起こす海域と考えられるが、ロシタ200海里内であり海洋観測資料がなく海洋に関する理解が遅れている。本年度は北太平洋西部亜寒帯循環域における渦の挙動と海洋構造を捉えるため、海洋観測データを収集・解析を行った。夏季に7県水産試験場によって行われる、サンマの資源・漁場調査における海洋観測資料を基に、次のようなことが明らかとなった。(1)毎年夏季にウルップ海峡付近に大きな時計回りの渦が存在すること、(2)この渦の中心は、低温低塩分低渦位となっており、(3)オホーツク起源の水の影響を強く受けている。さらに、人工衛星海面高度計資料により渦の変動過程を追跡した結果、ウルップ海峡付近の渦の形成は、(4)オホーツク海からの流出水が海峡付近にとどまって形成される場合と、(5)黒潮から切離された暖水塊が変質しながら北上し、ウルップ海峡付近でオホーツク海からの流出水の影響を受けて強化される、という2つの場合があることが明らかとなった。
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