異常気象の発生の多くは、ブロッキング形成と密接に関係しており、ブロッキングの成因の解明は重要な課題である。本研究では、総観規摸波動の励起メカニズム(wavemaker)を取り入れた簡単な順圧大気モデルを用いて、一連のブロッキングの数値実験を行なった。このモデルはR20に相当する解像度を持つ極めて簡単なものであり、物理過程として、傾圧不安定を想定したwavemaker・山岳強制・渦粘性・地表摩擦が考慮されている。 モデルの時間積分の結果、上記の物理過程だけでも持続性あるブロッキングのライフサイクルが再現できることが示された。本研究で用いたwavemakerは線形の傾圧不安定問題を解いて構築されたものであり、総観規模波動は指数関数的に増幅する。指数関数的に増幅する波がやがて非線形効果とバランスして飽和に達し、エネルギーが総観規模波動からプラネタリー波に輸送される過程はロスビー波の砕波を意味する。ポテンシャル渦度の解析結果、増幅しながら東進するロスビー波が地形性のリッジで砕波し、それがブロッキングとなることが示された。 ひとたびブロッキングが生じると、後続のロスビー波はブロッキングに近づくにつれて減速し、ジェットの南北への分流に引き裂かれるようにして砕波する。この後続のロズビー波の砕波により、高気圧性の渦位が北に、低気圧性の渦位が南に輸送され、それがブロッキングに併合される。この渦位の南北伸張・併合過程(eddy straining mechanism)によりブロッキングは長期間維持されることが示された。本研究の結果、wavemakerによる総親規模波動の指数関数的な増幅がブロッキングの形成および維持に本質的に重要であることが示唆された。
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