人工衛星による植生のモニタリングのアルゴリズムとして植生指数がある。現在、衛星データの解析に最もよく使われている植生指数は正規化植生指数(NDVI:Normalized Differennce Vegetation Index)であり、この手法を用いて多くの研究者により特定な地域や地球規模の植生分布図が作られている。しかしNDVIは植生の密度の大きな地域には良くフィットするが、半乾燥地などの植生の密度の小さな地域では背景の土壌からの放射の影響が強いため、誤差が大きいことが近年分かってきた。このアルゴリズムの欠点を補うものとして、NDVIを改良したものがSAVI(Soil Adjusted Vegetation Index)である。しかしこの植生指数は逆に植生の密度の大きな地域には適用できない。つまり植生の被覆率によりそれぞれの植生指数が誤差を生じるということである。そこで両者の欠点を補間した、乾燥地の植生モニタリングに適した植生指数アルゴリズム(最適植生指数Optimum Vegetation Index;OPVI)を、いくつかの野外実験で得られた分光反射率の観測値をもとに開発した。これは初めに各ピクセルの短波長赤外バンドの比を演算する。例えばLandsat TMでは(TM5/TM7)、ASTERでは(バンド4/バンド5)となる。両者の比は植生の密度と高い相関があり、求めた反射率比からあらかじめ設定したしきい値より大きな値はNDVIで、小さな値は疎らな植生に適したSAVIにより衛星データのピクセル毎の植生指数を計算する。 開発された植生指数アルゴリズム(最適植生指数)は中国西部のタクラマカン沙漠周辺と米国アリゾナの半乾燥地周辺で検証し、その正当性を得た。このように乾燥地のオアシスとその周辺の植生密度のダイナミックレンジが大きい領域では、本研究で提案したOPVIによる評価が有効であることが評価された。 なお、本研究で開発されたアルゴリズムは1999年7月28日に打ち上げ予定の米国NASAの地球観測衛星EOS-Aに搭載されるASTERセンサーの特殊プロダクト(乾燥地の植生被覆率および植生指数分布図)作成のアルゴリズムに採用され、その成果はEOS-Aのデータを利用する乾燥地の専門家に公開される。
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