研究概要 |
本研究は巨大氷床の流動を計算する場合の構成方程式として新しく提案された異方性流動則(Azuma,199を実験的に検証し、氷床のモデルに組み込むことを目的として行われた。本研究で得られた成果は以下のとおりである。 1. 多結晶氷の一軸圧縮クリープ実験におけるファブリックと歪み速度成分比の関係 三軸歪測定用一軸圧縮クリープ装置を製作し、試料に人工多結晶氷および南極氷を用いてクリープ実験を行い、試料の軸方位分布と三軸歪み速度成分の関係を調べたところ、異方性流動則から得られる計算値と良く一致した。 2. 二軸圧縮クリープ実験におけるファブリックと歪み速度成分および応力成分の関係 拘束応力と圧縮応力の比は軸方位分布がランダムな場合は0.5となり等方性理論と良く一致するが、ファブリックが発達するに伴い応力比は変化し、従来の流動則からははずれてくる。塑性異方性を考慮した流動則(Azuma,199)によれば実験結果をうまく説明できることが明らかとなった。 3. 南極氷床ドーム深層掘削氷のファブリック解析とテクスチャ変遷モデルの開発 Azumaの流動則に基づき氷床中のテクスチャ変遷をシミュレートするモデルを提案し、これから過去の地球の環境変動に関する新しい情報が引出せることを示した。
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