研究概要 |
エッジワ-ス・カイパ-ベルト天体(EKOs)や彗星が残存微惑星である可能性を理論面から多角的に検討することが本研究の目的である.本研究では,1)エッジワ-ス・カイパ-ベルト雲の構造の解明,および2)EKOsや関連小天体の物理的性質,特に力学的強度および氷微惑星としての物性の明確化に焦点を絞る. 今年度は2)に関する研究において大きな発展が得られた.すなわち微惑星の進化において基礎的な物理量の一つである粉体の熱伝導率の表式を導出し,EKOsの進化につながる氷微惑星の熱史および力学的強度の進化の計算を行ない,専門紙にすでに発表した.また上記の進化の素過程の一つとして,アモルファス氷中から揮発性分子の放出メカニズムを解明した.これは国際会議における招待講演として発表し,論文は現在印刷中である. これらにとともに,1)に関して,太陽系形成論に基づくエッジワ-ス・カイパ-ベルト雲のわれわれのモデルを適用した.EKOs間の衝突によって放出されるダストに着目し,エッジワ-ス・カイパ-ベルト雲が惑星間塵の源としてどの程度寄与しているかを定量的に評価した.その結果,エッジワ-ス・カイパ-ベルト雲は惑星間塵に有力な供給源の一つであることを明らかにした.またこの惑星間塵の同定方法を提案し,その検出の重要性を論じた.この結果は,関連国際学会で発表するとともに,学会誌に論文として発表した. 以上に加えて,EKOsと密接な関連をもつ天体である彗星から放出される塵の赤外観測結果を説明するモデルを提案した.このモデルにおいて,彗星儘の結晶化のメカニズムに関する新しいアイデアを提出した.この結果は国際天文学連合コロキウムで発表し,論文もすでに公表されている.
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