惑星間磁場が北向きの場合の磁気圏界面での速度勾配層を最も簡単にモデル化した磁場に垂直な2次元面内の圧縮性のプラズマ(流体)の流れに対して2次元のMHDのシミュレーションを行った。速度勾配層はケルビン・ヘルムホルツ(K-H)不安定に対して不安定となり渦が発生する。初期状態で流れの方向のシミュレーション領域の長さを線形でもっとも不安定なモードの8倍にとると、不安定によって発生する渦は3回の渦の合体を繰り返し最終的にはシミュレーション領域の中に一つの大きな渦が生成された。非圧縮性の2次元の完全流体では全運動エネルギーとエンストロフィーの二つの保存量が存在するが、K-H不安定の発展の間に全運動エネルギーはほぼ一定にとどまるが、エンストロフィーは数値粘性による選択的散逸によって時間と共に減少することがわかった。また圧縮性のためにエンストロフィーは小さく振動しながら平均としては減少することがわかった。従ってエンストロフィーは最小に向かう方向に系は発展しているようで、このK-H不安定によってできた渦の合体は自己組織化の現われであることがわかった。この自己組織化のために流れ方向の全運動エネルギーの波数スペクトルをとると、波数スペクトルのピークは時間と共に長い波長の方に移って行き逆カスケードを示すことが明らかとなった。また渦の合体によってK-H不安定によって生ずる異常粘性の値は線形で最も不安定な渦によって生ずる異常粘性の45倍にも達することが明らかとなった。単なる流体の場合と異なり流れに垂直な磁場がある電磁流体の場合には渦に伴って電流渦も発生し渦度の中心と電流渦の中心は一致することが明らかになった。以上の結果を空間的に成長するK-H不安定に焼き直して考えると磁気圏の尾部の磁気圏界面では非常に大きな接線応力がK-H不安定によって磁気圏界面に加わることが考えられる。
|