磁気圏界面における速度シアー層はケルビン・ヘルムポルツ(K-H)不安定に対して不安定となり渦が発生し、渦は高度に非線型状態に発展し運動量やエネルギーの磁気圏内への輸送を引き起こす。流れが磁場に垂直な2次元のMHDのシミュレーションと中性流体のシミュレーションを行いK-H不安定の非線型状態での基礎的な振る舞いを明らかにし、また観測結果との比較も行いK-H不安定の検証も試みた。得られた結果は以下の通りで1と2についでは論文にまとめられ出版され、3については現在投稿中である。 1.初期擾乱がランダムな場合とコヒーレントな場合のシミュレーションを行い、渦の合体は同じように起こり一つの渦に合体した最終状態はあまり初期擾乱には依らないことが明らかとなった。 2. シミュレーションから得られる時間と渦の波長の関係を、渦の動く速さは同じであることを用いてサブソラーポイントからの距離と渦による磁気圏界面の振動の周期の関係に直し、その結果を今までに報告されている異なる距離における磁気圏界面の振動の観測結果と比較し、サブソラーポイント付近での速度シアー層の幅とマグネトシースの平均の流れの速度を求めた。求まった値は非常にもっともらしい値となり、距離が40Reまでは確かにK-H不安定で起こった渦は合体を繰り返しながらテイル方向に流れて行くことが検証された。 3. 最も簡単な磁場のない中性流体の場合にもK-H不安定によって生じた渦は合体していくが、8個の渦が一つに合体した時のエンストロフィーと全運動エネルギーの比を計算すると、その比は理論的に求められる非圧縮性の最小エンストロフィー状態の時の比に近い。圧縮性が小さくなるとますますその比は理論値に近くなりK-H不安定による渦の合体は確かに最小エンストロフィー状態に緩和する自己組織化の過程であることがわかった。
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