今年度の研究によって得られた知見は次ぎの通りである。 1.磁気圏界面を2次元の流れでモデル化し磁場が流れと垂直な場合には、磁気流体の運動は2次元の流体運動と類似である。そこでまず手始めとして、2次元の流体シミュレーションコードに粘性の効果を入れ、流体のケルビン-ヘルムホルツ(K-H)不安定の発展がどのように粘性、つまりレーノルズ数に依存するかを明らかにした。シミュレーション結果によれば、粘性が大きくレーノルズ数が小さいほど小さな渦度構造が良く見られるようになり、一方粘性が小さくレーノルズ数が大きくなると非線型性による渦の合体で生ずる大きな渦度構造がよりはっきりと見られるようになることが明らかになった。また2次元のシミュレーションにおいてグリッドの数を400x400にとっている状態ではシミュレーションで表せるレーノルズ数は高々200程度であることが明らかになった。従って、K-H不安定で起こるような2次元乱流の渦度構造の理解にはシミュレーションコードに物理粘性を入れ、粘性に対する乱流構造の依存性を調べることが重要であることが示唆され今後磁気流体の場合にも拡張する必要性が示された。 2.磁気流体のエネルギー原理と固有線形解析によって、磁場がテイル状になった磁気圏プラズマシートで起こるバル-ニング不安定性ではプラズマの圧縮性の効果が無視でき、初期に行われた非圧縮性を仮定した磁気圏のバル-ニング不安定性の線形解析の結果が妥当であることが明らかになった。この結果はバル-ニング不安定が、磁場がテイル状になった時に起こるサブストームの開始の機構として重要な役割を果たす可能性があることを示唆する。
|